日本外来小児科学会誌 「外来小児科」第4巻1号 2001年(平13)氏名:西藤成雄(さいとうなるお)
所属:西藤こどもクリニック
要旨
医療機関におけるインターネット(INET)の利用実態を調査する目的で,本学会リサーチネットワークの協力を得て,本学会員にFAXによるアンケートを行った.
76.7%の医療機関においては何らかの利用がなされており,ホームページを開設する医療機関は27.5%になった.他の調査と比較し本学会にが所属する医療機関ではINETの利用割合が高い.INET普及以前からパソコン通信などを利用する会員が多かったためではないかと思われた.
INETで提供される患者への望ましい情報提供とサービス,そしてそれらの問題点は,INET未利用医療機関と既利用医療機関で意見の相違がみられた.INET未利用医療機関においては現行の法律に則し意見の相違の少ない情報の提示の回答が目立つが,INET既利用医療機関からは家庭で学べる医学情報などの回答が多い.またINETの利用経験に関わらず不適切な情報に対する危惧する意見は多い.
社会に大量の情報を流通させ人々のコミュニケーションも容易にしているINETは,患者への支援や情報提供についての認識や考え方にまで影響を及ぼしている.そして現実の世界では定義し得ない現象やサービスの出現に,従来の組織や法律との整合性に我々はいま戸惑い悩んでいる.しかしINETを臨床に導くために新しい倫理や利用法を提唱する時が来ている.
Abstruct
Title: Research on the Actual Internet Access Condition in Medical InstitutionsKey WordsOur society members were questionnaired to investigate the Internet (INET) access condition in medical institutions.
76.7% of medical institutions have some kind of Internet access, and 27.5% of medical institutions have opened a Web site on the Internet. When compared to other investigations, medical institutions that belong to our society have more frequent access to INET.
With respect to desirable information and services provided to patients on INET, the information with little opinion difference from the current laws is a typical answer of medical institutions who have not yet utilized INET, while many medical institutions who have already utilized INET suggest to provide medical information, etc. that could be learned at home. Many people expressed their anxiety about inappropriate information, whether they have the INET access experience or not.
INET has enabled the distribution of a large quantity of information to the society and achieved easy communication. INET even exerts influence on the recognition or concept as to support and information provided to the patient. And now, the time has arrived when new ethics or utilization method should be advocated to introduce INET to clinical sites.
インターネット,医療情報,外来患者,医療機関contents
はじめに参考文献
I.対象と方法
II.結果1.回答した医療機関の地域分布III.考案
2.診療形態
3.標榜
4.INETの利用実態
5.利用開始時期
6.医療相談が届いた経験
7.普及させると望ましい情報とサービス
8.INETの医療情報やサービスの問題
URL(カッコ内は記載を確認した年月日)1) 大櫛陽一,他.新技術媒体を利用した医療等に関する情報の提供と利用の現状分析についての研究.平成11年度厚生科学研究費補助金(医療技術評価総合研究事業)(H11-医療-20),2000年3月. 2) 台俊一.パソコン通信と育児相談.小児内科,1995;27:71-76. 3) 台俊一.小児科医療とコンピューターネットワーク.小児科の進歩,1997;17:49-52. 4) 宝樹真理.小児科フリートークメーリングリスト.東京小児科医会報,2000;18:53-57. 5) 根東義明,他.メーリングリストとインターネット -当科におけるホームページを利用したメーリングリストの活用- .周産期医学,1998;28:941-943. 6) 川村和久.小児科外来診療とコンピューター.小児科の進歩,1997;17:45-48. 7) 川村和久.育児支援とホームページ(1) -開業小児科の立場から-.Naonatal Care,1997;10:25-33. 8) 西藤成雄,他.ホームページを用いた喘息日誌の使用経験.アレルギー.1998;47:1205-1212. 9) 諏訪部章,他.インターネットによる吸入指導が奏功した気管支喘息の3例.呼 吸,1998;17:690-694. 10) 遠藤朝彦,他.インターネットのWebサイトを利用した花粉症対策指導.アレルギー.2000;49:495-504. 11) 西藤成雄,他.ホームページを利用した喘息患者または家族への情報支援について.日本小児アレルギー学会誌.2000;14:201-211. 12) 西藤成雄,他.子どものいる家庭におけるインターネット上の情報支援の利用実態について.小児科臨床.1999;52:881-885. 13) 西藤成雄,他.滋賀県内の子どものいる家庭におけるインターネットの健康・医療情報の利用実態について.滋賀医学.2000;23:17-22.
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