特別講演
演題睡眠障害――睡眠教育(眠育)の重要性――演者三池 輝久所属兵庫県立総合リハビリテーションセンター・子どもの睡眠と発達医療センター長、前熊本大学医学部発達小児科教授抄録「乳幼児と睡眠」新生児の睡眠には昼と夜の区別がなく一日中眠っているようにみえます。3か月ほどになると何となく昼と夜で睡眠時間の違いが現れ、6か月では主な睡眠時間が夜に纏まります。この時期の睡眠・覚醒リズムの乱れは発達障害と深い関係があることが推測されています。1歳半から2歳を過ぎるとREMと non―REM睡眠の区別が明確になり夜、一度眠りに就くと朝まで眼を覚まさずに眠るような生活リズムが作られます。
「睡眠障害と発達障害」このようなリズミカルな睡眠が乳幼児期に障害されるとその後の脳の発達に様々な影響が現れることが心配されます。ADHD(注意欠陥多動性障害)、言葉の遅れ、自閉症関連疾患を含むコミュニケーションの問題など、いわゆる発達障害と呼ばれる情況を引き起こしやすいと考えられます。発達障害と呼ばれる状態は「脳機能のバランスが著しく均衡を欠く状態」と言うことができます。睡眠問題と発達障害の関連を見ますと発達障害の素質をもった子供たちに睡眠不足を中心とした睡眠障害が起こると脳機能の不均衡が著明となり発達障害状態が引き起こされやすくなる、ということが見えてきます。特に、入眠時間のズレ(夜更かし)、中途覚醒、および総睡眠時間の短縮が後々問題になるポイントです。睡眠問題はどの年齢でも起こり、学校に通う時期には生活リズム後退による入眠時間後退(睡眠欠乏の原因=不登校の原因)、中途覚醒、睡眠関連性呼吸障害、頭痛、腹痛、夜尿など医学的問題に直結することが報告されています。睡眠障害が脳機能の偏りをもたらす状態では、それまで健康に育って来た子どもたちに対しても発達障害の診断名が当てはまってしまいますし同時に学校生活が困難となります。
「幼児期からの睡眠教育=眠育の重要性」夜型生活が浸透した現代社会では、睡眠の在り方の重要性が社会になかなか浸透しません。入眠時間が深夜を超える乳幼児では将来の脳機能発達の問題が心配されます。更に、夜型生活が習慣化すると学校社会生活にも影響が現れます。そこで幼児期からしっかりと睡眠の在り方や問題を学習しておく必要があると思われます(睡眠教育の必要性)。