今日ではインターネットが広く普及し、医療関係者が専門分野についてホームページを開設したり、時には医療相談に応じているのを見かけます。また、患者さんの体験談や患者会のホームページやネットワークによる交流も行われています。この様に健康増進や疾病対策の情報源やサービス・活動がが多数インターネットには存在し、最近次第に利用されることが増えてきました。正しい知識の普及は健康増進や疾病対策に重要なものであり、その知識を普及させることも医療関係者の努めです。それにインターネットは大きな効果が期待されます。しかし診療契約(注1)を結んでいない方からのネットワークからの医療情報(注2)は、営利が目的であったり、その患者さんには不適切な情報であったり、時にはかかりつけの医師との信頼関係に悪影響を及ぼしたりする可能性もあります。
何の制約もないインターネットで、こうした医療情報の流通やサービスがはたして人々の役に立つものになるのかどうか、多くの医療関係者は今日その動向を注意深く見守っています。
インターネットはそもそも多数の善意から構築されたコンピューターネットワークであり、そこに厳しい制限や規制はふさわしくありません。適切な情報の流通には、情報を公開する方や利用者一人一人の注意や心がけが最も大切です。そこで医療情報の利用や流通について、多くの医療関係者の意見をもとに、この「メディカル・ネチケット(注3)」を編集しました。
本誌は、ネットワーク上で不特定の方、または診療契約が明瞭でない方から、健康増進や疾病対策の情報を入手・利用する際に注意することや、ボランティアによる情報流通を円滑に行い、豊かな情報資源の構築のためのマナーについて概説したものです。
- 注1:
- 日常の医療は全て診療契約のもとで行われています。日常的には遠隔医療が最小限しか認められていない現在では、法律上で定められた形式での診察、つまり、医師が患者さんと対面して問診、聴診などを行い、医師をはじめとする医療関係者からの治療に関する提案、情報提供、指示などに対して、患者さんがそれを承知するという形式で診療契約が行われるものと考えられています。今後の法律改正などで、診療契約の内容が拡充されることは十分予想されますが、現時点でインターネット上で行われている医療相談の多くは、診療契約が結ばれていません。
- 注2:
- 医療情報には、学問としての医学情報、医療機関の所在地や設備などの施設情報、そして患者個人の診療に関する患者情報などが含まれています。本誌はインターネットで誰もが自由に閲覧できる医療情報の利用について手引きしたもので、機密性の高い患者さんの個人情報の扱いについて言及したものではありません。
- 注3:
- ネットワークを利用する際のマナーを「ネチケット」と呼ばれる場合があります。特に医療情報に関する利用について、本誌では「メディカル・ネチケット」と呼称しました。