- 演題
- アフガニスタンへの医療支援について
- 演者
- ○江原伯陽
- 所属
- エバラこどもクリニック
- 抄録
- アフガニスタンにおいては、20数年にわたる戦乱により、衛生面はもちろん、医療面での荒廃は著しく、そのため乳児死亡率や約17%、5才以下の幼児死亡率は25%の高率に達している。
カブール市内においては、下水道はなく、家庭から排出されるし尿はそのまま上水道に流れ込み、またゴミ収集のシステムもないため、ステーションには家庭廃棄物が散乱し、水溜りには汚泥が澱んでいた。このような環境およびそれに派生する疾病は、街行く人々においても、結膜炎やリーシュマニア症などの寄生虫による皮膚病を散見する。
一方、いくつかのNGOによるQuick Impact Projectsの立ち上げにより、母子保健のための診療所などはみられるものの、主たる医療機関(インディラ・ガンジー小児病院や陸軍病院など)においては医療機器が乏しく、あっても30数年前の古びたものであり、抗生物質の点滴はかろうじてできる状態にあるが、手術はほとんど施行できず、検査室ではわずか数本の試薬の空瓶が棚に並べているのみである。このような事態に対し、JICAは約17億円にも及ぶ医療機器や備品などのハードウエアを用意し、近日中に現地に緊急支援する予定であるが、その中には医学書などの医師または医学生の知識や技能向上のためのソフトウエアは含まれていないのは言うまでもない。
アフガニスタン国内における医師の養成は、主にカブール大学医学部においてなされ、年間約300-400名の医学生(男女ほぼ同数)を教育しているが、医学生が学習するための医学書や実験器具もなく、教授が記憶に頼りな がら口述する知識を、ただひたすらに筆記し、それを暗記しているのが実情である。図書室に置かれているわずかな医学書もほとんどが1970年以前のものである。初等教育への支援はUNICEFなどによる”Back to School"キャンペーンや一部NGOなどによる学校建設や筆記用具の寄贈などはよく知られた運動ではあるが、高等教育の荒廃ぶりはほとんど知らされておらず、その支援は現在のところ、皆無と言ってよい。
そこで、医療と教育を二本の柱にするわれわれ「カレーズの会関西支部」としましては、このような事態を打開すべく、2002年8月より、マスコミを通じて寄贈を呼びかけ、現在約500冊の医療関係者に中古英文医学書を収集し、カブール大学医学部への寄贈を予定している。しかし、一国の医師養成を支援するには、まだまだ冊数は不足しており、せめて最低一万冊は必要と思われる。そこで、阪神大震災において、医療活動に多大な支援および理解を示した近畿地区在住の小児科の先生方に、中古英文医学書の寄贈をお願いしたく、今回の呼びかけをさせていただきました。