新年早々、ご多忙な毎日が始まろうとしておられるのにこんな質問が年始のメールになりましたことをお詫び致します・・・。
(注釈:生後2カ月、男児)
ヘルニアはお腹の壁のすきまから腸が体の外に出てしまっている状態を言います。出る場所によって名前が違います。
”でべそ”は正式には「臍ヘルニア」と言います。こちらの方は大変目立ちますが、1歳過ぎる頃から凹んできます。年輩の先生(例えばうちに父)などは臍ヘルニアはりが出てこないように、十円玉などを絆創膏で押しつけておくなどという指示を母親にしていますが、それはまったく前世紀の遺物のようなやり方で、最近の医師はその様な指示を出していません。ちなみに今日では、小さいヘルニアは1歳までは放置しておく事となっています。たいていの臍ヘルニアは、1歳前後で何事もなかったように凹んでいきます。
睾丸の横のヘルニアは、”陰嚢ヘルニア”か”ソ径部ヘルニア”かどちらかだと思います。実際に診てみないと分かりませんが、大きなものでは”嵌頓(カントン)”の恐れがあります。嵌頓とは、はみ出した腸の中に便が入り腸が体の中に戻らなくなった状態で、放置しておくと腸の血行が悪くなり最悪の場合は腸が”壊死(エシ):腐ってしまう”に陥ってしまいます。それを起こす可能性があるほど大きいのかどうか私には分かりませんが、それは診てもらっている外科の先生の意見を聞いて下さい。
そんなに危ないものなら早く手術して治してしまえばいいのですが、年齢を考えると”おいそれ”とは出来ません。手術するかどうかは、現在のヘルニアをどの程度危険と考えるかどうかによるでしょう。お子さんの体を診てない私には分かりませんので、どうか外科の先生の指示に従って下さい。
では、これから大事なことを2点だけお話ししておきます。
外科の先生も嵌頓したときの症状を十分に外科の先生に尋ねておいて下さい。小さいお子さんですから分かりにくいものです。とにかく不機嫌だという時は、睾丸の横のヘルニアを気を付けてみて下さい。赤く腫れていたりすれば嵌頓している可能性があります。
もし嵌頓が疑われた時どの様に対応しればいいのかも、必ず外科の先生に尋ねてお いて下さい。お住まいの近くで緊急の臍に観てもらえる病院はどこか、など必ず確認しておいて下さい。できれば観てもらう外科の先生から病状を説明した紹介状をもらっておくとよいでしょう。
この2点を必ず確認しておいて下さい。そうすればいざというとき何も慌てることはありません。もしもお子さんの様子で心配でしたら、私の自宅にでも電話を下さい。
それでは、気がかりなことがあればいつでもお便りを下さい。