小学2年の息子の事なのですが、1ヶ月ほど前から声のチックというのか、頻繁に 「アッ、ボソボソ」と声を発するようになりました。「アッ」は比較的大きな声で、 「ボソボソ」は小さな声で、テレビの声を真似たり、本を読むときに、それを声に出した りしているようです。 やめるように注意をすると、口を押さえながら苦しそうな表情をして、少し声が小 さくなるのですが、すぐに元に戻ってしまいます。 息子に聞くと、声を出していないとイライラすると言います。 その症状以外は普通の子供で、学校の成績もよく、友達とも活発に遊んでいます。 実は、半年ほど前にも別のチック症状が出たことがあります。それは、首を左右に 激しく振るという症状でした。 その時の原因は、近くに住んでいる私の父が亡くなり、お葬式から火葬まですべて 子供に見せたことと、母親が一人暮らしになったので、実家へ引っ越すことを子供に 話したが、転校して友達と離れるのをいやがったため、無理に納得させたことだと思 います。 しかし、私の母親が孫のチックを見て同居を断念してくれ、引っ越さなかったので、 1、2ヶ月で治まりました。 そこで、ご相談したいのですが、 1.この症状を治すために、親としてどのように子供に接すればよいのでしょうか。 2.週に2〜3回、はり治療を受けさせていますが効果はあるでしょうか。 3.病院での治療を受けさせた場合、具体的にどのような治療になるのでしょうか。 よろしくお願いいたします。
瞬目や手足を振る、そして首を振るなどの体の一部に繰り返し見られる早い動きが常同的に見られる習癖のことを”チック”と言います。特に5〜12歳、男児が多いと言われています。一般に原因は心理的な不安や緊張とされています。
教科書的には「心理的な事が引き金となって起きている」と記されています。しかし、私は経験が乏しいためかもしれませんが、元気で活発で何の屈託もないお子さんでも見られる症状と思っております。そして、家庭環境にもなんら問題がなくてもチックの出る子はたくさんいるはずだと思っています。
精神療法が有効とされていますが、それはあくまでも心理的な問題を認めた場合に有効であって、症状の軽いお子さんでは本人や家族に心配のないことをよく説明し、病識を与えず自然治癒を待つのが最良の方法とされています。
もしも家庭の環境や親としての接し方に何か問題があるとお考えなら、速やかに改善されればよいでしょう。しかし、症状の悪化を恐れて必要以上にお子さんを寛容する事も決してよくはありません。どうしても耐えなくてはならないことは、親自身が子に教えていかねばなりません。
成書には、なんだかお母さんに今までの育て方について反省を促すような指導をされているものもあります。チックの原因を何もかも心理に結びつけておられる方もおられますが、チックは心理的にも問題はなく健常なお子さんでもみられる症状です。そういった心理的な問題が無いのなら、お子さんとは自信を持って接していくことの方がむしろ治癒を早めるでしょう。そして、子どもが抱く親への安心感も大きな要素です。
ただし、このチックの症状に声(ボイス・エモーション)を伴う場合は、チックの中でもまた別に「Gilles de la Tourette(ジル・デ・ラ・ツーレット)症候群」と呼ばれています。私はこの場合どちらかといえばやや積極的に治療を行うことをお勧めします。
その理由の一つは、本人は声を出しスッキリしているかもしれませんが、親やまわりの者へのストレスが大きな問題となるケースが多々あるからです。チックだけでは相談されないですが、声を伴うようになって初めて相談されてくる場合も多いと思います。そう言ったお母さんは口をそろえて「イライラするから、止めて欲しい。」と言ってこられます。ショッキングなことですが、実際に親が子供を絞め殺したケースも私の身近であります。「可愛さ余って憎さ百倍」といいますが、正にこの状態です。
他に年長のお子さんでは、声が勝手に出ることが自分で気になる場合があるようです。本人も人前では恥ずかしいから、声を出さないように気をつける、すると緊張してまた声が出る。この悪循環が始まると、本人も真剣に悩むし、本格的な心理面のケアーをやっていかないと、なかなかフォローしきれない事があります。
お子さんの奇声で大変なストレスを感じておられるかもしれませんが、早い目にかかりつけの先生と相談の上、小児科で神経専門の先生を紹介してもらうのが一番よいと思います。
もしも小児科で神経専門の先生を紹介して下さったなら、中枢神経の検査(脳波やCT、MR)などされた上で、軽い精神神経用薬の投与から始められるかもしれません。内服期間は症状をみながら決めることになると思います。何か不安なことがあれば遠慮なくすぐに尋ねましょう。
針の治療については、私は詳しく知りません。