■ ダニ対策の必要性
大人の喘息では2/3程度、小児喘息では約9割の患者さんがアレルギーをもっています。その中でも一番多いのが、ヒョウヒダニという小さなダニに対するアレルギーです。このダニの死骸を含んだホコリを吸い込むと発作がおきます。実際にダニアレルギーのある喘息患者さんの住まいのダニを減らすと喘息症状が軽くなることが確認されています。普通に掃除しているだけではこのダニを減らすことはできないので、ダニ対する特別な手段が必要となります。■ アレルギーを起こすダニについて
喘息やアトピー性皮膚炎などの原因となるダニの正確な名称は「チリダニ科コナヒョウヒダニ属のヤケヒョウヒダニとコナヒョウヒダニ」です。人間のアカや抜け落ちた髪の毛などをえさにして1年中増え続けています。6〜7月に増殖し8〜9月に死ダニが増える。これが秋に喘息発作の多い原因の一つとも考えられています。 →参照 ■ダニの季節変動■ ダニの増加の原因ダニの種類の種類は次のように分類されています。
- ツメダニ ヒトを刺す
- ヒゼンダニ 疥癬の原因
- コナダニ 畳や家具食器に付着する
- チリダニ 家屋にすむ(0.3〜0.4mm)
- ヤケヒョウヒダニ Dermatophagoides pteronyssinus
- コナヒョウヒダニ Dermatophagoides farinae
コナヒョウヒダニ
ヤケヒョウヒダニこれらの写真はフジサワ・ファイソンズから配布されている卓上カレンダーのものを使いました。 ヒョウヒダニは大きさが0.2-0.5@で、卵から成虫になるまで、15-20日であり、寿命は2-3ヶ月といわれています。イエダニのように吸血はしないので、その存在には気がつきません。アレルギーの発症に大きく関わっているダニアレルゲンはヒョウヒダニの死骸や糞などに混じっているシステインプロテアーゼという酵素といわれています。
最近のアレルギー疾患の増加は、家屋に生息するダニの増加と深い関係があるといわれています。最近の家屋にはそうしたアレルギーの原因となるチリダニが増えているのは事実かもしれません。しかしこれらのダニは人を刺しません。
体の発疹や痒疹などを診て欲しいと外来を受診される家族にはやたらダニに刺されたのでしょうかと尋ねられることが多いです。ダニが最近は増加していると聞いて、そう思っておられるのでしょう。
繰り返しますが、アレルギーの原因となっているチリダニは人を刺しません。人を刺すのはツメダニといわれる種類です。このツメダニが家屋にたくさんいるとなれば、その家族の家屋の汚染は想像に耐えられないものではないかと、、いつもそんなことを思いながらお話をお伺いしております。 (^ ^)
エアコンの普及によって室内の環境が年中一定していることや、アルミサッシの普及で室内の機密性が高まり、これらの要因が重なって、室内にダニの住みやすい環境となり増加を招いていると指摘されています。■ ダニの多いところまた室内の埃1gあたりにダニ抗原が 2μg/g dustあれば、ダニによる感作危険因子、室内の埃1gあたりにダニ抗原が10μg/g dustで喘息発作の危険因子とされています。
よくお盆やお正月の帰省先で喘息発作を起こされるお子さんがいます。よくお話を聞くと普段使っていない古い布団が原因と思われる場合があります。恐らくその布団はダニが繁殖する格好の条件で、ダニの抗原量が前述の「喘息発作の危険因子」を越えていたのだろうと想像しています。
※ 10μg/g dust の抗原量はダニ100匹に相当
室内のホコリの中にいますが小さくて目にはみえません。ふとんや枕の中、床には特に多く、ソファー、カーテン、ぬいぐるみなどにもたくさんいます。床はジュウタンが一番ダニが多く、たたみ、フローリングの順に少なくなります。室内で毛のあるペットを飼っている家はダニが多いこともわかっています。■ ダニを減らす方法
- 寝具の清掃が最も大事
- ダニを減らす環境づくりは色々な方法が紹介されていて、何からやればよいのかよく分からなくなりますが、まずは寝具の清掃から始めることがよいと思います。1日にうち8時間は体に接している寝具です。ジュウタンやカーペットよりも、まずは寝具の清掃です。
市販の掃除機(吸い込み効率が210W/h、紙パック式)で1平方メートルあたり20秒かけて吸塵、これを2週間に1回続けることで1平方メートルあたり100匹以下のダニ数に減少させることが出来るとされています。この量は先ほど申しました、”喘息発作の危険因子”を下回る量です。
簡単に言えば、普通の掃除機で構いませんから、ふとん1枚の裏表に約1分づつ時間をかけて埃を吸い取ることです。
まずは寝具の清掃を2週間続けてみて下さい。喘息発作の回数が減るなどの効果が期待できます。
ダニは線維にしがみつくと実は風速40mの風でも吹き飛ばされません。ところがそこそこの弱い風だとよく飛ばされることが知られています。先ほど普通の掃除機と言いましたが、わざわざ高い吸塵力の掃除機を購入する必要ではありません。
これから説明することにすべて共通していますが、高い商品を手に入れるよりは、毎日根気よく続けることが大事です。
また、ふとんを敷いた後、寝るまでに30分以上時間をあけると舞い上がったホコリが落ち着き、吸い込む量が少なくなります。
天気のよい日に寝具を干すことは大事ですが、実はダニを死滅させる効果はそれほど高くありません。ふとん乾燥機も高温でダニを殺す効果がありますが、生き残ったダニはまた増殖するので、やはり掃除機をかける必要があります。
除湿も重要で、部屋の湿度60%を目標にするとよいでしょう。
室温25度で湿度が75%で最もよく増殖します。夏は室温を下げるよりは、湿度を下げる方が効果があります。
- 防ダニシーツの使用も医師と相談して検討する
- ダニアレルゲンの粒子をほとんど通さない高密度繊維でできたふとんカバーや、防ダニ加工を施したふとんなども有効です。
ただし、色々な製品がありますが、防ダニと書いてあるけれども、ほとんどその効果がないモノも販売されています。
帝人の”ミクロガード”などはその効果が学会などで報告されていますので、効果があると思います。
ただし、購入する際には、主治医とよく相談しましょう。金額もそこそこしますし、お金をかけた分だけの効果(コストベネフィット)があるかどうかは、分かりません。
ミ○モ○タのお昼の番組で「ココアが体にいい!」と放送されると、スーパーの食品売場からココアが無くなってしまうそうですね。色々な情報が耳に飛び込んできますが、ホントに必要なモノなのか一人で十分に考える力がこれからは必要です。
先ほども述べましたが、高価なモノを購入するよりも根気よく手間暇をかける方が効果は得やすく長続きすると思います。
- ジュウタンを減らす
- 床に掃除機をかけるときにもたたみ1畳につき1分の時間をかけて下さい。
ジュウタンはできるだけはずしてください。ソファーはビニールのカバーのものなら掃除がしやすくダニもあまり増えません。
カーテンはまめにはずして丸洗いすればよいでしょう。
- ぬいぐるみなどの手入れ
- ぬいぐるみは丸洗いするか、ビニールの袋やケースなどにいれて飾っておくだけにしましょう。しかしお子さんが肌身離さずぬいぐるみを大事にされていると、大変悩ましい問題となります。
- ペットを飼わない
- 最近、喘息のお子さんでペットをどうしたらよいだろうと相談を頂くことが多くなりました。もうすでに犬やネコなどの毛の生えた生き物は喘息によくないと言うことはご存じだろうと思います。
少し以前なら、ペットを手放す事を進めていたのですが、家族同様にペットを飼っておられる家族もたくさんおられますし、現実的な指導ではないような気がしてきました。
そこで最近はペットを十分に洗えば喘息発作の回数を減らす事が出来ると報告されるようになりました。犬は洗う習慣がありますが、ネコを洗う習慣と言うのはなかなか無いそうですね。水を浴びることが嫌いなのでしょうか、でもしかしここは飼い主のためにもネコに耐えてもらいましょう。そしてせめて、ペット少なくとも寝室には絶対入れないようにしましょう。
最近ではペットを”パートナー”と呼ぶくらいになってきました。ですから、簡単に「手放しなさい!」と言うと人権侵害(ペットの人権侵害?!)となってしまう程です。喘息の程度にもよるのですが、何とかして共存出来る方法を捜さなくてはなりません。
そして、ペットは必ず寿命がつきるまでは大事に飼って下さい。ただし、その後は、もう飼わないようにしましょう。
→ 「ペットをどうしようか、、。」
- 効果が乏しい方法
- ダニの殺虫剤は床のダニを減らしますが、生き残ったダニがすぐに増えるので効果は長続きしません。
空気清浄器はファン式のものは空気中のホコリを減らす効果はありますが、家中の空気をすべてきれいにする効果はありません。また寝具のホコリは減らないのでこれだけではダニ対策にはなりません。